17つくつくし


注:2019年9月大和郡山市大和田町の行者滝を訪ねました。途中の谷道は法師蝉が「つくつくほうし、つくつくほうし」と繰り返し鳴いています。夏が過ぎて、過ぎてゆく季節、色々な行事や生き物たちを法師蝉も惜しんで鳴いているのかもしれないと思いました。(原曲:おんごく(歌:youtube):昔大阪の盆の女童の行列の唄)


 腰越は鎌倉近し山桜(男声女声)          常朝  (演奏時間1:43)

注:1999年4月江ノ島の腰越へ会社の釣りクラブで海釣りに行きました。帰りに車で134号線を走ると道路の左の土手に山桜が咲いています。腰越から鎌倉はわずか数キロなのに、昔義経は兄頼朝にここで足止めされて鎌倉に入れず、兄に釈明もできず京へ戻ったとのことです。 

 梅林を巡る缶酒尽くるまで(男声女声)      常朝  (演奏時間1:40)

注:2007年2月奈良の追分梅林で地元の人達が運営する屋台で温かい缶酒を買いました。少しずつ飲みながら酒がなくなるまでゆっくり梅林を歩きました。気分は最高でした。

 鳰の子のひとり遊びをしてゐたる(男声女声)   常朝   (演奏時間1:38)

注:20011年10月奈良大和民俗公園を訪ねました。菖蒲園のそばの池に鳰の子が1羽だけいて、水に潜ったり泳いだりしていました。邪魔するものがいないので、好き勝手に遊んでいました。(原曲:お手玉唄一人でさびし)

 葭切や色落ちつきし朱雀門(男声女声)        常朝 (演奏時間2:25)
 
注:2007年7月平城京跡・朱雀門を訪ねました。1998年復元が完成した頃は、朱の色も明るくいかにも復元したという感じでしたが、9年も経つと色も落ち着いてそれなりに風格が出てきました。それを喜ぶように近くの草原で葭切が元気よく鳴いていました。

16花時計

 啓蟄やかたりと進む花時計(男声女声)  常朝  (演奏時間1:50)

注:2010年3月京都精華町のけいはんな花空間(現在:京都府大精華キャンパス)を訪ねました。入り口に大きな花時計があって、見ていると一分毎にカタリと音を立てて針が動きます。土中の虫が動き出すという啓蟄のころ、一分毎に春が近づくような気がしましたた。(原曲:orpheus作曲)

 楽しげな大日供会に交じりたし(男声女声)     常朝  (演奏時間2:00)
  
注:1992年3月22日御所市・巨勢寺跡を訪ねました。線路に挟まれた跡には大日堂があり、そこでは10人位の地元の主婦達が、大日供会を楽しそうにしていました。我々は旅人なので、座に入るのは遠慮しました。できれば地元の祭などの話を聞きたかったです。(原曲:あんた方何処さ)

 菜の花の金色浄土に遊びたし(女声男声)      常朝  (演奏時間1:50)

注:2015年3月22日奈良・生駒市の高船口から京田辺の高船まで歩く途中羊小屋から羊の声がして、そばの菜の花畑は満開で白い蝶も飛び、ぎっしり詰まった花の空間は浄土のようでした。(原曲手毬唄:四方の景色)

 顔を寄す顔の高さの梅の花(女声男声)    常朝  (演奏時間1:44)

注:2007年2月奈良市西南の砂茶屋から追分梅林を訪ね、売店で缶酒を買い、飲みながら梅林を歩きました。梅の花は高さがそれぞれですが、少し酔っぱらいながら顔の高さの花に顔を寄せました。(原曲:orpheus作曲)

 針掛かり見事に逃げし青葉鱒(男声女声)   常朝  (演奏時間1:45)

注:1986年夏、親戚の蓼科別荘から家族で釣りに行きました。たしかにマスが針に掛かったのですが、見事に逃げられました。結局この日は父子3人で5匹しか釣れませんでした。(原曲:orpheus作曲)

15嬰抱きて


注:2002年7月長男の家新築・移転などで初孫を何度か預かりました。そのときは汗ばむ子を抱いて寝かせるのにサマータイムを唄いました。ミュージカル「ボギーとペス」の子守唄で、最後の歌詞が気に入っていました。(原曲:坊やはよい子だ)

 ポン菓子を買い得て出れば春の雪(男声女声) 常朝  (演奏時間2:20)

注:2018年2月前年の12月中学校のクリーンデイ(環境掃除の日)で懐かしいポン菓子をいただき、なくなったので買おうとしたが近くの店では売っていません。やっと少し離れたスーパーで買えて、喜んで店を出たら春の雪が降っていました。少しの間ですが昔に戻った気分でした。(原曲:雪やコンコン)

 娘の立てし泡をほめもし初点前(男声女声) 常朝  (演奏時間1:26)

注:2019年1月正月に帰省した子の発案で長く使わなかった部屋の炉を使ってお茶会をしました。中学の孫娘が母親に教わりながらお茶を立て、茶筅を使い泡がきれいにできたので、皆がほめながら初茶をいただきました。(原曲:羽根突き唄ひとめふため)

 下通るときのうれしさえごの花(男声女声)   常朝  (演奏時間1:30)

注:2016年5月奈良・王龍寺から鳥見町のあひる池を訪ねました。王龍寺のもと寺領の道脇にはエゴノキが咲いており、道の上に伸びた枝からもえごの花が小さな釣鐘状の花をぶらさげていました。地味ながら白い美しい花の下を通るときは、なんとなく華やいで嬉しい気分でした。(原曲:子守唄ねんねころいち)

 野営火は娘らのしぐさにはなやいで(男声女声)常朝 (演奏時間1:33)

注:1979年7月長男が入ったボーイスカウのキャンプにデンダッド(チームの父親役)として参加、キャンプファイアにリーダーの女子高生らも参加して歌やダンスを指導しました。キャンプファイアもおかげで華やいだ雰囲気となりました。(原曲:花いちもんめ)

14花御堂

 み仏のおなかぽっこり花御堂(女声男声)  常朝  (演奏時間1:50)

注:2012年4月8日奈良飛鳥寺の花祭りに参列しました。広くもない本堂に花御堂が作られ、誕生仏がかわいいお腹をぽっこりふくらませて立っておられました。花御堂周辺だけが別世界のように華やいでいました。(原曲手毬唄:一番始めは。)

 猪垣の中に山門宇陀の寺(男声女声)     常朝  (演奏時間1:48)

注:2018年9月奈良・宇陀市の仏隆寺を訪ねました。宇陀市といっても山の中の寺なので、猪や鹿が出るらしく山門への坂の途中に猪垣があり、手で扉を開け閉めしないと入れません。有名な彼岸花はまだ蕾でしたが沢山白い茎を伸ばしていました。昔いたと思いますが猫はいませんでした。(原曲:山寺の和尚さん)

 筒鳥や人麻呂の妹眠る山(女声男声)     常朝   (演奏時間2:00)

注:2004年5月奈良・天理市の竜王山に自転車で登りました。途中の山道はふすま(衾)路といい奈良時代は墓地で柿本人麻呂の妻も眠っています。人麻呂はどんな思いでこの道を登ったでしょうか。山道に入ると筒鳥がぽーーん、ぽーーんと鳴きました。(原曲:通りゃんせ)


注:2006年3月木津川市のクローバー牧場を訪ねました。
牛小屋の奥の方には子牛が数頭いて、どの子牛も我々を恐れずに見ていました。
子牛たちの目はまるで、小屋から連れ出してと言っているようでした。(原曲:かごめかごめ)

 神山に月登れりと声あがる(男声女声)     常朝  (演奏時間1:45)

注:2007年9月奈良・三輪大社の観月会に参加しました。祈祷殿の庭から三輪山を仰ぎましたが、なかなか月が出ません。すると、誰かが「月が出た」と声を上げました。神の山から登る月は、まことにきれいでした。(原曲:うさぎうさぎ)

13秋の水馬

   ひかりのみ見えしは秋の水馬(女声男声)    常朝        (演奏時間1:54)
 
注:2007年9月吟行のいつものメンバーで奈良東吉野村・天好園を訪ねました。庭園の奥に小川があり、流れの中にキラキラ光るものが見えました。よく見ると水馬(アメンボウ)でした。

   亀岩は船着場跡冬紅葉(女声男声)          常朝  (演奏時間2:05)

注:2011年12月信貴山を降りて大阪柏原市の雁多尾畑へ行くと、昔大和川の船着場のあった亀の瀬があり、神社下から川を見下ろすと亀の瀬の亀岩が見え、周囲は冬紅葉がきれいでした。ここから上流へは小さな舟に荷物を積み替えたようです。

 浮図田の砂利に遊ぶ子地蔵盆(男声女声)  常朝  (演奏時間2:07)

注:2015年8月奈良・元興寺の地蔵盆に参列しました。4時頃から若い人達が境内の五輪塔や浮図田(ふとでん:ふとは仏陀、仏塔)の多くの石仏に灯明皿を置き、
5時から法要、6時から琴尺八の演奏でしたが、始まる前は子供達が浮図田の砂利で遊んでいました。(原曲:ずいずいずっころばし)

 蝌蚪泳ぐぶつかるまではまっすぐに(男声女声) 常朝 (演奏時間1:54)

注:1996年3月世田谷区の次大夫堀公園を訪ねました。中に小さな川があり、ゆるい流れにおたまじゃくしが沢山泳いでおり、見ているとたいていの子等は相手にぶつかるまでまっすぐ泳いでいました。どのくらい大きくなるとぶつからなくなるのでしょうか。(原曲:一匁の一助さん)

   生きるとは選びゆくこと土筆摘む(男声女声)     常朝 (演奏時間2:00)

注:2009年4月テレビで平成天皇皇后両陛下が皇居内の原で土筆を摘まれていました。天皇が后に「その土筆の方がいいよ」とか言われながら摘まれていました。
考えてみれば土筆摘みどころか、人生すべて選択の連続だったと思いました。
自分の選択が良かったかどうかはわからないが、良かったと思うしかないでしょう。

12烏瓜


 公家谷の水清らかに烏瓜(男声)       常朝  (演奏時間 1:43) 

注:2007年11月京田辺市・普賢寺地区を歩きました。関白近衛基通公が隠居された公家谷があり、その谷のきれいな水の上に、赤い烏瓜が掛かっていました。基通公も見たのでしょうか。

 雲雀鳴き止めば大和は静かなり(男声女声) 常朝        (演奏時間1:43)

注:2003年3月奈良・富雄川・砂茶屋の南を歩いていたら西側の田園の空で雲雀が続け様に鳴いていました。しばらくすると鳴きやみ、あたりが急に静かになり大和盆地全部が静寂に包まれました。

 大仏殿黒々見えて蛍かな(女声男声)     常朝        (演奏時間1:42)

注:2000年6月奈良・東大寺の大仏蛍を見に行きました。大湯屋のそばの小川からは暗い二月堂の灯が見え、右手には大仏殿が黒々と見え、そのうち大きめの大仏蛍がゆうらりと飛んできました。

 ダム囲む山大きくて囀れり(男声女声)     常朝       (演奏時間1:45)

注:2004年5月奈良・川上村の丹生川上神社上社を訪ねました。神社は大滝ダムの南岸の高台にありますが、そこから見えるダムは、周囲が完全に大きな山に囲まれており、どの山からも囀りが聞こえるようでした。


  水掛祭ビルマの美女の水を受く(男声女声)  常朝        (演奏時間1:54)

注:2001年4月退職後、海外協力事業でビルマ(ミャンマー)の統計局コンピュータ・システムの支援で1ヶ月ヤンゴンに滞在したとき、水掛祭に誘われました。市内の道では車の上から若い男性や美女が周囲の我々に水を掛けて回りました。



11通草とり


 通草とり親しき山となりにけり(男声女声)        常朝        (演奏時間1:43)

注:1987年秋奈良・飛鳥カントリークラブの南の山に池があり、その奥に通草(あけび)を見つけました。それ以来この山が好きになりました。

 ゆっくりと落つる木の葉を受け取れず(男声女声)  常朝     (演奏時間1:38)

注:2001年12月奈良・民俗博物館のある矢田公園を訪ねました。高いクヌギの木から枯れ葉がゆっくりと散っていましたが、意外に手では受け取れませんでした。

  平城京船着場跡柳絮飛ぶ(男声女声)              常朝       (演奏時間2:09)

注:2004年5月大和郡山市・九条公園の西の秋篠川の平城京船着場跡を訪ねました。
ここは奈良時代平城京西市のあったところで市場への荷物が陸揚げされた所のようです。川の鯉などを見ていたら、昔の朱雀大路の柳並木からでしょうか、柳絮(柳の綿毛)が飛んできました。

  要塞の跡に船寄せ眼張釣る(男声女声)        常朝        (演奏時間1:45)

注:19984年3月会社の釣りクラブで金沢八景に海釣りに行きました。釣り船一ノ瀬丸は横須賀の猿島要塞跡の海に船をつけたので、人に分けるほどメバルが沢山釣れました。

 椋鳥の先頭曲がり遅れたる(女声男声)     常朝        (演奏時間1:33)

注:1997年9月多摩川原を歩いていたら、椋鳥の500羽以上の大群が川から北の方へ飛びました。途中で大群は向きを下流の方へ変えましたが、その時先頭の鳥は曲がり遅れてしまいました。







10赤蜻蛉

   赤蜻蛉やっぱりここと戻りけり(女声男声) 常朝        (演奏時間2:00)

注:2015年10月奈良・生駒市の高山竹林園を訪ねた折、庭園本館の東側の坂の手すりに赤蜻蛉が止まっていて私が近づくと飛んでいきました。しばらく歩いて振り返ると、同じ赤蜻蛉が同じ所に止まっていました。この場所が好きだったのでしょう。

 行く秋の小さき港に諸子舟(男声女声)          常朝        (演奏時間2:10)

注:2016年10月琵琶湖西岸の北小松・松水に句会の先輩方と鮎の背がき料理に行きました。時間があったので北の漁港の方へ歩いたら、小さい漁港に諸子舟が繋がれて誰もおらず、深み行く秋の湖の風情でした。

 幾たびも空を見上ぐる良夜かな(女声男声)  常朝        (演奏時間1:43)

注:2017年10月はじめ、快晴で名月が見られました。夕方見てあまりにきれいだったので、夕食後も空を見上げ、また入浴前も、寝る前も外に出て月を見ました。

 綿弓を音立て弾く乙女かな(女声男声)   常朝        (演奏時間1:53)

注:2018年11月奈良・大和民俗公園のふるさとフェスタを訪ねたら博物館入口のフロアでは、木綿糸作りの実演・演習があり、綿弓で糸ほぐしと糸車で糸作り(糸ぐり)をしていました。中学生らしい女生徒が指導員の指導を受けながら、綿弓で木綿の花を弾いて音を立てていました。芭蕉の句 「綿弓や琵琶になぐさむ竹の奥」にあるように、ビューンビューンと鳴らして。 

 刈田焼く大和の国をけぶらせて(男声女声) 常朝        (演奏時間2:04)

注:2015年10月奈良・大和民俗公園へ富雄川の岸を南へ歩くと途中の田は稲刈りが済んで、農夫が一人籾殻や雑草を焼いていました。その煙は風の方向が変わるので、四方へとひろがり、まるで奈良だけでなく大和の国すべてをけぶらすように見えました。

9旅愁

 邯鄲や旅愁は母の好きし歌(男声女声)   常朝        (演奏時間1:41)

注:2007年9月庭で邯鄲(かんたん)のやや低く落ち着いた鳴き声が聞こえました。聞いていると昔を思い出し、母が「ふけゆく秋の夜旅の空の」という歌・旅愁が好きだったことを思い出しました。

   疑似餌投ぐつくつくほうしに包まれて(男声女声) 常朝    (演奏時間1:53)

注:1987年8月奈良・飛鳥カントリークラブの奥の池でブラックバス釣りをしました。魚の好みそうな疑似餌を選び、竿を振って投げるのですが、池の周囲は法師蝉の声で包まれていました。2000年頃からは生駒市の遊園として整備され、釣りは禁止となりました。

 結核棟跡に背高き姫女苑(男声女声)      常朝         (演奏時間1:42) 

注:1995年6月清瀬の国立東京病院の結核病院跡を訪ねました。ここは俳人石田波郷がなくなる昭和44年まで入退院を繰り返した所ですが、訪ねた頃は空き地が残っており、背の高い姫女苑が沢山咲いていました。波郷もおそらく見たでしょう。 

 堰下に水鶏来てゐる秋日和(男声女声)    常朝        (演奏時間1:50)

注:2010年10月近くの富雄川を歩いたら富雄中学校前の堰下に水鶏(くいな)が1羽いました。水鶏を見たのは初めてで驚きました。川面には秋の日差しがあって良い風景でした。

 彼岸花いきなり降りし天の花(女声男声)         常朝        (演奏時間1:27)

注:2015年9月京都・精華町の山田川を歩いていたら田の畦のあちこちに彼岸花が咲いていました。よく通る道で先日までは何もなかったので、まるで天から花が降ってきたようでした。

8百合鴎

 百合鴎自由の女神の海を飛ぶ(女声男声)   常朝        (演奏時間1:17)

注:2001年1月長男夫婦の住むアメリカ・シンシナテイを訪問後、夫婦でボストンからニューヨークを訪ね貿易センタービル屋上から自由の女神を見ました。女神の海を鴎が白く悠々と飛んでいました。

 眼前に長城迫り栗の花(女声男声)      常朝        (演奏時間2:01)

注:2008年6月北京に住む長男一家に招かれて次男一家と7人で北京を訪ねました。
天安門や故宮博物館、胡同などの前に暮田峪長城を訪ねました。
生まれて初めて見る長城の入り口付近は栗の花が白く咲いていました。

 ここからは落葉敷く道足弾む(女声男声)   常朝        (演奏時間1:50)

注:2004年12月奈良・神功皇后陵を訪ねたとき、拝所までの坂道に落ち葉が敷き詰めていました。ゆるい坂道ですが落ち葉を踏むとかさかさと良い音がして足が軽くなりました。

 行き先は父の戦地か去ぬ燕(男声女声)     常朝        (演奏時間2:05)

注:2016年8月16日。奈良・平城宮跡の芦原には例年燕の大群が集まり、毎日数万羽が南へ飛び立ちます。孫たちと、夕方7時頃大極殿跡復元事業資料館の西側の軒下に燕の乱舞を見に行きました。この日集まった7万羽位の燕の一部は戦死した父の戦地だったガダルカナル島へ帰るのでしょうか。

 美しき蛾の止まりをり転害門(男声女声)   常朝        (演奏時間1:49)

注:2003年7月奈良の転害門を訪ねました。奈良で1200年以上残っている只一の建物です。土塀は少し崩れていますが、柱に美しい蛾が止まっていました。まるで昔からいるように。

7田植待つ 

 堰水の豊かに田植待つ景色(男声女声)    常朝        (演奏時間2:14)

注:2011年5月近くの富雄川を大和田町の行者滝へ向かって歩いていたら、川にいくつかある堰がどれも水が満杯であふれそうでした。
川沿いの田に引く水を貯めているのでしょう。田植えが始まる前の、豊かで美しい景色でした。

   斑鳩の古墳を照らす望の月(男声女声)    常朝        (演奏時間2:30)

注:2016年9月奈良・斑鳩の藤ノ木古墳に月見茶会に行きました。暗くなりすぎないうちに抹茶とお菓子をいただき、月の出を待つと薄雲を抜け出た満月がしっかりと古墳の円い丘を照らし古墳公園の木からは草雲雀が聞こえました。
古墳の主への慰めと祈りのようでした。

   見上ぐれば西の覗きに雲の峰(男声女声)   常朝         (演奏時間1:45)

注:2013年8月奈良・大峰山の修行寺である竜泉寺に参拝した折、大峰山への登山口の女人結界を訪ねました。結界の橋の近くから見上げると、修行の場のひとつ「西の覗き」の崖が見えましたが、そのとき大きな雲の峰が先を白く輝かせ力強く立っていました。

   山桜山のけむりのたゆたひて(女声)     常朝        (演奏時間1:50)

注:2015年4月吉野山の花会式を訪ねる途中、下市町・才谷の山桜の古樹を見ました。
小さな稲荷社のある山桜の花に囲まれて周囲の山をみると、一本の煙が山間から上がって、ゆっくり揺れていました。 

 
   雨脚の光りてゐたる山の滝(男声女声)    常朝         (演奏時間1:03)

注:2002年6月東吉野村の投石の滝を訪ねました。樹齢千年の衣掛け杉がそびえる山中のたきですが、眺めていると、たまたま雨が降ってきました。滝の前に雨粒が光って豪快な滝水と光を競っているようでした。

6竜胆

  あの畦にありし竜胆もうあらず(女声男声)   常朝        (演奏時間1:43) 

注:京田辺市高船の峠近い田の畦に2016年頃まで春になると竜胆(りんどう)が咲いていましたが、2018年の春にはなくなっていました。楽しみにして登ったのに。

   皇后の荘たりし谷稲の花(女声)        常朝         (演奏時間1:39)

注:2018年8月下旬、精華町の山田川を歩いていたら稲の花が咲いていました。
精華町の柘榴地区は、地元の日出神社の説明によると奈良時代、光明皇后の荘園であったようです。奈良時代と同じように、白くかわいい稲の花が咲いていました。

 はしゃぐ子をとらえて祭のはっぴ着す(女声男声)常朝        (演奏時間1:32)

注:1976年10月近くの蔵之宮の秋祭りで子供たちもお神輿の行列に参加しました。
長男4歳は喜んで、法被を着せようとするとはしゃいで家中を逃げ回りやっと捕まえて
着せて参加しました。年に一度の祭となると子も親もうきうきしていました。

 茅の輪流る初瀬の川の夕風に(男声女声)    常朝        (演奏時間2:00)

注:2018年6月末奈良・田原本町の村屋神社の夏祓祭を訪ねました。
渡された切幣を我が身に掛け、祈祷などの神事後、子供たちが茅の輪を初瀬川まで運び、橋から茅の輪を投げました。夕日と夕風を受けて茅の輪がゆっくりと、おそらく海まで流れて行くのは良い景色でした。

   土筆とりはかまとりして子と過ごす(男声女声) 常朝        (演奏時間1:45)

注:1985年東京転勤から奈良へ戻った頃はまだ近くに田や畑が沢山あり、蛍さえ飛びました。翌春、近くの田の畦道に小学生の次男と土筆とりにいき、家へ帰ってから二人ではかまとりをしました。次男もあっという間に高校、大学、就職と進み離れて暮らしています。今となっては、貴重な時間でした。

5今日の月

  上がるほど白くなりゆく今日の月(男声混声)   常朝        (演奏時間1:48)  

注:2013年9月奈良・斑鳩の月を見るため法隆寺の東の上宮遺跡公園を訪ねました。
月の出を待っていると東の空から月が上がってきましたが、見ていると段々白く美しくなってきました。

  雪しきり我が身昭和にある如し(男声)            常朝        (演奏時間1:53)

注:2015年1月5日は雪で、朝からしきりに降り続いていました。庭の雪を見ていると、昔生家の窓から道に降る雪を見ていたのを思い出し、自分が昭和時代に戻ったような気がしました。

  虹色の夢見るごとく合歓の花(女声)       常朝        (演奏時間1:50)

注:2015年6月奈良市富雄中学校の前の富雄川の岸に合歓の花が咲いて、ふわっとした花がまるで夢を見ているようでした。おそらく虹色の夢だったでしょう。

  傾ける日に華やぎて桃の花(女声)                     常朝        (演奏時間1:52)

注:2016年4月桜井市の檜原神社参拝後、西200メートルほどの桃畑を訪ねました。
大和三山の見える国中(くんなか)に日は傾きはじめていましたが、満開の桃の花はますます華やいで見えました。

  秋雲の白はお空が青いから(女声混声)             常朝       (演奏時間1:40)

注:2017年廃止される以前の奈良少年刑務所内の詩作教室で、少年受刑者が作った
「雲」という題の「空が青いから白を選んだのです」の詩に動かされ作句しました。
教師の寮美千子さんのNHKラジオ深夜便での話では、少年の幼い頃母が「つらいことがあったら空を見て、そこに私がいるから」と言ってなくなったとのことです。

4風花

    風花の朝日の粒となりて舞ふ(女声男声)    常朝        (演奏時間2:20)  

注:2008年2月24日朝庭に約2センチの雪が積もっており、風花がちらちらと舞い降りて、朝日にきらめいていました。まるで朝日の光の粒のようでした。

      白い花が咲いてゐたのは卯の花よ(男声女声) 常朝        (演奏時間1:34)

注:2010年卯の花の咲く頃、倍賞千恵子さんの「白い花が咲いていた」を聞いていたら昭和30年(1955年)頃生家の隣に疎開していたS叔母が歌ってくれたのを思い出しました。まもなく叔母は大阪へ帰り、後に高校進学した私を下宿させてくれましたが私の大学卒業を待たずに亡くなりました。

       きらめきて波寄せきたり芦の角(男声女声)   常朝        (演奏時間1:34)

注:2011年4月、奈良の神功皇后陵を訪ねたら濠に芦の角(若芽)が数本にょっきり出ており、波がきらめいて寄せていました。春が来たという確かなしるしに、少し希望が湧いてくる気がしました。

  花筏帯解くやうに流れ出す(男声)       滝川        (演奏時間1:33)

注:2012年春の大和句会(運河支部)で特選にとらせていただいた句です。
岩か何かに止まっていた花筏(水面の桜のはなびら)が端の方から流れ出すのを帯解くようにと詠まれたので美しい光景が目に見えるようです。

  柳絮の空大きな絮はますぐ飛ぶ(男声女声)   常朝        (演奏時間1:45)

注:2013年5月木津川の中河原の岸を歩いていたら、河原の高い木、おそらく泥柳、
から後の藪の暗がりの前を日差しを受けて、柳絮が沢山上下に揺れながら飛んで来ました。よく見ると柳絮にも大小があり、大きな絮(わた)はまっすぐ飛んでいました。 

3歌姫

 
 歌姫の土塁の跡よ囀れり(女声男声)    常朝        (演奏時間1:24)

注:2004年4月平城京跡の北の歌姫を訪ねたら、奈良時代の禁苑であった歌姫地区の土塁の跡があり、その小さな樹林に小鳥がさえずっていました。その昔ここには天皇家の楽人と歌姫が住んでいたとのことで歌姫の歌が聞こえるような気がしました。

   山茶花の花びら吹きて花笛に(女声男声)  常朝        (演奏時間1:30)

注:2005年11月奈良市西南の大和田町の行者滝を訪ねたら、はやくも山茶花が咲いていました。滝には他に誰もいなかたので、面白がって草笛のように花びらを吹いたら音がでました。メロデイーはむずかしかったですが。

    白雲も山も映して植田澄む(男声女声)   常朝        (演奏時間2:25)

注:2005年6月7日唐招提寺の開山忌を訪ねるとき、富雄川を歩いていたら川沿いの田は田植えが済んだあとで早苗が小さく、澄んだ水に白雲や矢田丘陵の山が映り、美しい日本の風景でした。

    大年の夕日は白し雲透きて(男声女声)   常朝        (演奏時間1:22)

注:2005年の大晦日(大年)、最後の夕日を見ようと家を出て、東側のゆるい坂をのぼりました。あいにく薄い雲が西の空にかかっていて、きれいな夕日は見れなかったですが、白い太陽を年の最後の日に見ることができました。

    チューリップ咲く植ゑし人逝きたるに(男声女声)常朝        (演奏時間1:35)  

注:2007年4月同級生が急死したので弔問に訪ねたら彼女が庭に植えたチューリップが10本以上咲いていました。2019年4月近くの矢田民俗公園の花壇に高さの違うチューリップが一列に並び音符のようだったので、その音符をもとに作曲しました。

2森青葉

 馬に乗り青葉の森に入りゆけり(男声女声)  常朝        (演奏時間1:49)

注:1994年6月会議出張でドイツ本社のあるシュツットガルトの北西90キロのHerxheim HaynaのホテルKroneに滞在したとき、村の道を30才くらいの女性が馬に乗ってすぐ近くの森に入って行きました。彼女もドイツの森の空気を感じたでしょう。

 春愁の瞳の少女とすれ違ふ(男声女声)    常朝        (演奏時間1:30)

注:1996年4月転勤先の東京から自宅のある奈良へ週末に帰った時、近くの飛鳥カントリークラブへの道を歩いていたら、深刻でつらそうな瞳の高校生くらいの美しい少女とすれ違いました。4月なので新しい学校にいやなことがあったのか、何があったのでしょうか、他人事ながら少し気になりました。

    ふるさとの道に似し道芒道(男声女声)    常朝        (演奏時間1:50)

注:2000年11月奈良の大和民俗博物館を訪ねたら、杉皮葺きの民家もあり、道には芒が風に揺れていました。昭和25年(1950年)頃祖父と歩いた生家近くの山道を思い出しました。今はその道も舗装されてしまいましたが、昔家の山に風呂用の薪を取りに行きました。

 皇后の御成りあるかに梅白し(男声女声)   常朝       (演奏時間1:40)

注:2003年3月近鉄富雄駅近くの線路脇の梅が実に清らかで白く、美智子皇后(現上皇后)が御成りになるような美しさでした。

 秋の蝶誰の魂かと思ふ(女声男声)      常朝       (演奏時間1:45)

注:2004年11月近くの飛鳥カントリークラブの南の矢田丘遊歩道を歩いていたら、美しいツマグロヒョウモン蝶が近づいて来ました。その2年前に母が亡くなり、同じ年に高校からの親友と大学からの親友が亡くなったので、誰の魂かと思いました。

1虫時雨

 月の出の遅しと虫の時雨けり(男声)      大牙        (演奏時間1:15)

注:1970年頃銀行役員をしていた義父が生前地元の阿波野青畝氏らの指導を受けつつ作句した中の一句です。

 いつからの一匹なるや水馬(男声女声)       暮石        (演奏時間2:11)

注:1977年(昭和52年)頃からご指導いただいた右城暮石先生の句です。亡くなられた奥様をしのんでの御句かもしれませんが心に残る句です。
 
 木枯の果てはありけり海の音(男声混声)      言水        (演奏時間1:20)

注:1979年頃、大岡信の「折々のうた」(朝日新聞)にあったこの句に感銘を受けて
俳句をまじめに考えるようになりました。木枯しは太平洋を越えてカリブ海まで行ったのかも。

 夏逝くや父の手旗を見せられて(男声女声)   常朝        (演奏時間1:40)

注:1980年頃、母が存命中の夏の終り、タンスの引出しから父が輸送船に乗っていた時使っていたという手旗(海軍の手旗信号用)を出して見せてくれました。5才の時戦死した父に生前カメラを見せてもらったことなどを思い出しました。 

 船腹に川波映す二月の陽(男声女声)         常朝        (演奏時間2:00)

注:1994年2月当時住んでいた世田谷の多摩川を歩くと古い舟が放置されていて、川波の光が水陽炎のように舟腹に映って揺れていました。