11通草とり


 通草とり親しき山となりにけり(男声女声)        常朝        (演奏時間1:43)

注:1987年秋奈良・飛鳥カントリークラブの南の山に池があり、その奥に通草(あけび)を見つけました。それ以来この山が好きになりました。

 ゆっくりと落つる木の葉を受け取れず(男声女声)  常朝     (演奏時間1:38)

注:2001年12月奈良・民俗博物館のある矢田公園を訪ねました。高いクヌギの木から枯れ葉がゆっくりと散っていましたが、意外に手では受け取れませんでした。

  平城京船着場跡柳絮飛ぶ(男声女声)              常朝       (演奏時間2:09)

注:2004年5月大和郡山市・九条公園の西の秋篠川の平城京船着場跡を訪ねました。
ここは奈良時代平城京西市のあったところで市場への荷物が陸揚げされた所のようです。川の鯉などを見ていたら、昔の朱雀大路の柳並木からでしょうか、柳絮(柳の綿毛)が飛んできました。

  要塞の跡に船寄せ眼張釣る(男声女声)        常朝        (演奏時間1:45)

注:19984年3月会社の釣りクラブで金沢八景に海釣りに行きました。釣り船一ノ瀬丸は横須賀の猿島要塞跡の海に船をつけたので、人に分けるほどメバルが沢山釣れました。

 椋鳥の先頭曲がり遅れたる(女声男声)     常朝        (演奏時間1:33)

注:1997年9月多摩川原を歩いていたら、椋鳥の500羽以上の大群が川から北の方へ飛びました。途中で大群は向きを下流の方へ変えましたが、その時先頭の鳥は曲がり遅れてしまいました。







10赤蜻蛉

   赤蜻蛉やっぱりここと戻りけり(女声男声) 常朝        (演奏時間2:00)

注:2015年10月奈良・生駒市の高山竹林園を訪ねた折、庭園本館の東側の坂の手すりに赤蜻蛉が止まっていて私が近づくと飛んでいきました。しばらく歩いて振り返ると、同じ赤蜻蛉が同じ所に止まっていました。この場所が好きだったのでしょう。

 行く秋の小さき港に諸子舟(男声女声)          常朝        (演奏時間2:10)

注:2016年10月琵琶湖西岸の北小松・松水に句会の先輩方と鮎の背がき料理に行きました。時間があったので北の漁港の方へ歩いたら、小さい漁港に諸子舟が繋がれて誰もおらず、深み行く秋の湖の風情でした。

 幾たびも空を見上ぐる良夜かな(女声男声)  常朝        (演奏時間1:43)

注:2017年10月はじめ、快晴で名月が見られました。夕方見てあまりにきれいだったので、夕食後も空を見上げ、また入浴前も、寝る前も外に出て月を見ました。

 綿弓を音立て弾く乙女かな(女声男声)   常朝        (演奏時間1:53)

注:2018年11月奈良・大和民俗公園のふるさとフェスタを訪ねたら博物館入口のフロアでは、木綿糸作りの実演・演習があり、綿弓で糸ほぐしと糸車で糸作り(糸ぐり)をしていました。中学生らしい女生徒が指導員の指導を受けながら、綿弓で木綿の花を弾いて音を立てていました。芭蕉の句 「綿弓や琵琶になぐさむ竹の奥」にあるように、ビューンビューンと鳴らして。 

 刈田焼く大和の国をけぶらせて(男声女声) 常朝        (演奏時間2:04)

注:2015年10月奈良・大和民俗公園へ富雄川の岸を南へ歩くと途中の田は稲刈りが済んで、農夫が一人籾殻や雑草を焼いていました。その煙は風の方向が変わるので、四方へとひろがり、まるで奈良だけでなく大和の国すべてをけぶらすように見えました。

9旅愁

 邯鄲や旅愁は母の好きし歌(男声女声)   常朝        (演奏時間1:41)

注:2007年9月庭で邯鄲(かんたん)のやや低く落ち着いた鳴き声が聞こえました。聞いていると昔を思い出し、母が「ふけゆく秋の夜旅の空の」という歌・旅愁が好きだったことを思い出しました。

   疑似餌投ぐつくつくほうしに包まれて(男声女声) 常朝    (演奏時間1:53)

注:1987年8月奈良・飛鳥カントリークラブの奥の池でブラックバス釣りをしました。魚の好みそうな疑似餌を選び、竿を振って投げるのですが、池の周囲は法師蝉の声で包まれていました。2000年頃からは生駒市の遊園として整備され、釣りは禁止となりました。

 結核棟跡に背高き姫女苑(男声女声)      常朝         (演奏時間1:42) 

注:1995年6月清瀬の国立東京病院の結核病院跡を訪ねました。ここは俳人石田波郷がなくなる昭和44年まで入退院を繰り返した所ですが、訪ねた頃は空き地が残っており、背の高い姫女苑が沢山咲いていました。波郷もおそらく見たでしょう。 

 堰下に水鶏来てゐる秋日和(男声女声)    常朝        (演奏時間1:50)

注:2010年10月近くの富雄川を歩いたら富雄中学校前の堰下に水鶏(くいな)が1羽いました。水鶏を見たのは初めてで驚きました。川面には秋の日差しがあって良い風景でした。

 彼岸花いきなり降りし天の花(女声男声)         常朝        (演奏時間1:27)

注:2015年9月京都・精華町の山田川を歩いていたら田の畦のあちこちに彼岸花が咲いていました。よく通る道で先日までは何もなかったので、まるで天から花が降ってきたようでした。