26梅に鶯

   できすぎよ梅見てをれば鶯も(男声女声)  常朝    (演奏時間 1:50)

 注:2014年3月京田辺の高船を訪ねました。
高山溜池(くろんど池)の東の高船口からゆるい坂を登ると途中に羊小屋があり、この日は羊が放たれて田の草を食べていました。そばに梅が咲いていたので眺めていたら、なんと鶯が枝に飛んできて止まりました。梅と鶯を同時に見たのは生まれて初めてで幸運でした。 
   高船は京と大和の国境
   高船へ登る谷坂春浅し
   羊小屋脇に咲きたる梅白し
   できすぎよ梅見てをれば鶯も

      みな笑顔桜並木に逢ふ人は(男声女声) 常朝    (演奏時間 1:45)  

注:2010年4月奈良・大渕池から山陵町あたりまで秋篠川の桜並木を歩きました。桜が実に満開で天気も最高だったので、すれ違う人達は皆笑顔でした。
    大渕の池源流に
    流るる川の川沿いに
    桜並木のつづきをり
    皆笑顔桜並木に逢ふ人は

   回りつつ輪を狭めけり鴨の陣(男声) 常朝    (演奏時間 1:50) 

注:2018年1月末奈良・大和民俗公園へ行った帰り、大和田城の北の池を訪ねました。たまたま鴨が20羽くらい集まっていて鴨の陣を作っており、そのうち鴨たちが時計回りに回転をはじめました。見ているとその輪が段々と狭くなってきて、そのうちの1羽が輪から抜けてしばらくして元に戻りました。何のために回転をしているのでしょうか。

    城跡に近き池あり波静か
    鴨の群集まり回る鴨の陣
    抜け出し戻る鴨もおり
            回りつつ輪を狭めけり鴨の陣

   吉隠の寺に一樹の冬紅葉(男声)  常朝     (演奏時間 1:50) 

注:2015年11月奈良・桜井市の吉隠(よなばり)を訪ねました。
ここは、天武天皇の穂積皇子がなき但馬皇女を偲んで詠んだ万葉集の歌
「降る雪は あはにな降りそ 吉隠の 猪養(ヰカヒ)の岡の 寒からまくに」
に詠まれた地です。
実生の楓を取りに来ていた地元の男性に、教えてもらい極楽寺(無住寺)を訪ねました。1400年も経った今、但馬皇女のお墓の場所はわからないらしいですが、冬紅葉が一樹きれいで皇女への供華のようでした。(原曲:Orpheus作曲)

    吉隠の冬は寒しや山中に
    但馬皇女の墓ありと
    いへど見ゆるは山ばかり
    吉隠の寺に一樹の冬紅葉

   枯芒触るれば温みありにけり(男声) 常朝     (演奏時間 2:10) 

注:2011年12月京都山田川から木津川の上河原を訪ねました。川面には鴨の群が全身揺られており、岸の枯れ芒に触れると猫の毛のように柔らかく暖かでした。12月にしては良い日差しだったのでしょう。

    大川の川面に鴨の群揺れて
    河原に師走の日差あり
    岸辺に一群枯芒
    枯芒触るれば温みありにけり

25磐座

   磐座に木の葉落つるを待ちゐたり(男声) 常朝  (演奏時間 1:57)  

注:2013年11月奈良・生駒市矢田遊歩道のドンデン池から小明町の稲倉神社を訪ねました。説明板によると明治以降、兵隊のがれ祈願の神社として信仰を集めたようです。ここには烏帽子岩と呼ばれる高さ6メートルの磐座があります。磐座に木の葉が散るのを見ようと待ちましたがなかなか散ってくれませんでした。(原曲:Orpheus作曲) 

    矢田丘の麓の谷に神社あり
    高き木の下に鎮座の大岩は
    烏帽子の形の神の岩
    磐座に木の葉落つるを待ちゐたり


    大川の曲がりおほらか桑紅葉(男声) 常朝  (演奏時間 1:35) 

 注:2012年11月奈良・川西町の糸井神社を訪ねました。太鼓踊りの絵馬など見てから、寺川に出ました。橋のたもとに桑の木があり、きれいに黄葉しています。上流を見ると広い川が左へおおらかに曲がってゆったりと流れていました。どこかで見たような景色でもあり心が落ち着きました。(原曲:Orpheus作曲)

    太鼓踊りの絵馬ある社は川ほとり
    岸の桑の樹黄葉せり
    踊りの輪の如く曲がれる大川よ
    大川の曲がりおほらか桑黄葉 


  山門は明智の城門冬紅葉(男声) 常朝     (演奏時間 2:26) 

注:2017年11月菊ずくめの料理・菊御膳をいただくため、近江の西教寺を訪ねました。参道には鬼の大津絵を描いた灯籠が置かれ、冬紅葉がきれいでした。

山門の説明文にはこの地の名君と言われた明智光秀の城門が移設されたとありました。
    菊ずくしの御膳いただく大寺は  (原曲:Orpheus作曲)
    光秀ゆかり琵琶湖のほとり
    見事なる紅葉もさらに馳走なり
    山門は明智の城門冬紅葉


 お目当ての小豆粥出て十夜寺(男声) 常朝   (演奏時間 2:11) 

注:2008年11月いつもの俳句メンバーで奈良・法徳寺のお十夜に参列しました。お十夜は浄土宗の念仏会ですが、小豆粥が振るまわれると聞いて喜んで参列、長いお経と説教が終わると期待通り小豆粥がでて美味しくいただきました。がまんの甲斐がありました。

    奈良町の古きお寺の念仏会
    昔は十日十夜もお経あげたると
    秋の夜にあまた集いし本堂に
    お目当ての小豆粥出て十夜寺


     威銃谺の方が強かりし(男声)   常朝   (演奏時間 2:01)

注:2014年8月京都精華町の田んぼの並ぶ山田川沿いに歩いていたら、突然威銃が「どん」となり、川の北側対岸の小山の崖にこだましてバキューンというような音がしました。谺(こだま)の方が音が相当強くて驚きました。

    川沿いに早くも稔る早稲田あり
    歩めば飛び立つ稲雀
    驚かすいきなり響く威銃
    威銃谺の方が強かりし