28花の雨

   安万呂の墓を鎮めて花の雨(女声男声)        常朝    (演奏時間 1:50)

注:2012年4月奈良市東の此瀬町の大安万侶の墓を訪ねました。墓は茶畑の斜面にあり、登ろうとすると雨が降って来ました。見上げると供花のように桜が満開でした。桜に降る静かな雨が1300年もここで眠っている安麿呂の墓を鎮めているようでした。
    奈良の東の茶畑に
    古事記なしたる人眠る
    祈れば降りきし花の雨
    安万呂の墓を鎮めて花の雨


     田に映り飛びゆく蛍ことのほか(女声男声)    常朝    (演奏時間 1:34)

注:2015年6月奈良・飛鳥川の飛び石に蛍狩りに行きました。
夕茜の空の下、蛍を待っていると一匹二匹と下流の藪から光が見えました。
しばらく川岸で蛍を見たあと、県道に戻って、川を見下ろしたら、蛍が岸から離れて田の上を飛びました。田植え前の水に蛍が映って数が二倍になったようで格別きれいでした。
    古きより飛び石残る飛鳥川
    夕茜待てば夕闇迫りきて
    川面から田の面へ蛍二つ三つ
    田に映り飛びゆく蛍ことのほか

この飛び石は万葉集の 明日香川明日も渡らむ石橋の遠き心は思ほえぬかも 巻11-2701
に詠まれている石橋です。


      芭蕉聞きし雲雀の声か細峠(女声男声)      常朝    (演奏時間 2:15)

注:2019年5月子供の日、桜井市鹿路から細峠を経由して竜在峠に登りました。
細峠を右へ(西へ)折れて歩くと雲雀の声が聞こえました。
細峠には芭蕉の句碑「ひばりより空にやすらふ峠かな」があります。
まさしく雲雀はやや下の方から聞こえたので、
芭蕉もこのように雲雀の声を聞いたのだろうか、と昔を思いました。
    鹿路から竜在峠への山の道
    細峠には芭蕉句碑
    ひばりより空にやすらふ峠かな
    芭蕉聞きし雲雀の声か細峠


      淋しげに見ゆる桜の花盛り(女声男声)       常朝    (演奏時間 1:58)

注:2019年4月平成最後の31年の春、近くの富雄川岸を歩いたら大きな桜の木々が満開でした。桜並木なので、孤立しているわけではないのですが、すべてがなんとなく淋しげに見えました。見事な花盛りなのでこれからは散るしかないと感じたからでしょう。
    平成の最後の春はたけなわよ
    川沿いの土手に桜の並木あり
    どの木も今や花盛り
    淋しげに見ゆる桜の花盛り

      金剛の時間水とて田水引く(男声女声)       常朝    (演奏時間 1:45)

注:2007年5月奈良・御所市金剛山のふもと伏見あたりを歩きました。
金剛山の水で育つ米は美味しいですが、水は貴重なので田毎に時間を決めて分水します。それを時間水というらしいですが、そのために小さな時計塔がふもとの畦に立っていました。
    金剛山ふもとに番水時計立ち
    貴重な水を田に分かつ
    葛城のおいしい米に育つべく
    金剛の時間水とて田水引く