24棗の実

  文机にひとつづつ減る棗の実(男声女声)  常朝   (演奏時間 1:58)

注:2015年10月奈良・奥明日香の入谷から桜井市鹿路(ろくろ)を訪ねました。途中の坂道に棗(なつめ)の木が一本沢山の実をつけていました。あまりにきれいな実だったので5、6個ほど失敬して、自分の机の上の皿に置いて眺めていましたが、そのうち食べたくなって毎日一つづつ食べました。
    明日香から芭蕉通りしろくろ道
    急坂にありし一樹のなつめの木
    いただきし赤紫の実の五つ
    文机にひとつづつ減るなつめの実 


  鳰浮くを百まで数え待ちにけり(男声女声)  常朝     (演奏時間 2:10)

注:1993年11月近くの奈良・大渕池を歩きました。冬になると水鳥が多く来ますが、この日は鳰(にお)だけが、2,3羽潜ったり泳いだりしていました。1羽が潜ったあと百まで数えたが出てきません。あわれ水に溺れたのかと思ったのですが、おそらくここから見えない所に浮き出たのでしょう。(原曲:Orpheus作曲)
    美術館うしろに見ゆる大き池
    さざ波の広がり来たる岸辺にて
    水鳥さがせば鳰いたり
    鳰浮くを百まで数え待ちにけり


  静けさを楽しみゐるや二羽の鴨(男声女声) 常朝   (演奏時間 2:07)  

注:2018年10月奈良・大和民俗公園を訪ねた帰り、奈良・大和田城跡の北500メートル位の所に60メートル四方の池がありました。柵で囲まれていますが、奥の方に鴨が二羽静かに浮かんでいました。あたかも静けさと穏やかさを楽しんでいるようでした。(原曲:Orpheus作曲) 薮を背に城跡近き池ありて

    白雲映す天高し
    よく見れば奥に番か鴨ゐたり
    静けさを楽しみゐるや二羽の鴨


   乗馬して少女廻れり穂草原(男声女声)  常朝      (演奏時間 1:50)  

注:2012年10月木津川の下河原を歩くとテニスコートの北側に乗馬クラブがあり、大きな木の周りを2、3頭の馬が騎手を乗せて歩いていました。その中に少女もいて、手綱さばきも上手に、穂草の中を悠々と騎馬練習をしていました。
    大河原の乗馬クラブに秋高し
    大木を囲む広場を馬場として
    穂草揺らして馬進む
    乗馬して少女廻れり穂草原


  いつまでも綿虫宙に用事なし(男声女声)   常朝      (演奏時間 2:10)

注:2011年10月京田辺の水取から打田への谷道を歩きました。途中の坂道では綿虫が数匹飛んでいます。見ていると疲れを知らないようにいつまでも宙に浮いている。彼らには飛ぶ以外まったく用事がないようでした。(原曲:Orpheus作曲)
    谷沿いの道の片側大岩も
    峠に近き曲り道
    綿虫のゆっくり飛べり秋の谷
    いつまでも綿虫宙に用事なし